ニコ技深圳観察会用自己紹介文(竹迫良範)

1. 自己紹介

竹迫良範です。2017年4月のニコ技深圳観察会に参加した平野さんの会社の上司の上司にあたる管理職40才です。平野さんには会社のブログで長編の5つの記事を書いていただき圧倒的感謝です。

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元々は大量のトラフィックを捌く職業Perlプログラマーでしたが、セキュリティ技術のR&Dと新規事業開発を経験し、現在は日本の大企業における内製開発の組織作りを担当しています。現代社会は高度に専門分化された職務がありますが、ブラックボックスを次々と開けていく低レイヤー技術を身に付けつつも、雑多な仕事も何でも一度は自分の手でやってみて経験してみることをモットーに職務の深さと幅を広げてきました。

2. 何を仕事にしてるか

普段は上場企業R社のIHD担当(大企業におけるインハウス・内製開発組織構築)の専門役員として、100名規模のエンジニア・デザイナー・プロダクトマネージャーの組織作りとマネージメントを担当しています。兼業先の一つとして、IPAで未踏IT人材発掘・育成事業のプロジェクトマネージャーも兼務しており、25歳未満のアントレプレナーシップを持った若いITエンジニアの個人プロジェクトの立ち上げ支援を行なっています。担当分野はセキュリティと低レイヤー案件です。新規事業の0→1においてハードウェアのプロトタイプやモックアップを気軽に作れる環境は日本でも整ってきましたが、1→10のフェーズで事業拡大する段階になったときにどうやって量産するのかといったノウハウの有無に大きなギャップを感じています。全部を一国一企業の自前主義にこだわることなく、それぞれが得意な領域を持つパートナー同士でコラボレーションしていくようなやり方を深センで学びたいと思っています。

3. 自分の時間で何を作ってるか

2006年にセキュリティキャンプで講師をすることになったことがきっかけで、若者向けのセキュリティ演習教材を趣味の余暇の時間で作っています。国立高等専門学校機構 高知工業高等専門学校(高知高専)の客員准教授も兼務しており、セキュリティ素養を持ったモノづくり人材を育成するため、高専生向けのセキュリティSTEM教材を試作しています。今年度は、全国の高専を巡るキャラバン隊の一員として、高知高専石川高専、阿南高専鈴鹿高専、弓削商船高専、都立産技高専などでIoTセキュリティ演習を実施しています。

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私が自作した教材の中では、5Vで動作する50円のAVRマイコンのGPIO端子をON/OFFし、高速にLチカすることで、10kHzでPS/2の疑似キーボード信号を生成し、自分オリジナルのBadUSBを製作してみるという自作演習が一番人気です。当初、第1世代のキットでは純正のAVRライターAVRISP mkIIを使っていましたが、1個3,200円と高価だったため、演習後に機材一式を持ち帰って自己学習することができませんでした。そこで、格安のAVRライターを低コストで自作することを決意し、第2世代のキットとして、FTDI社FT232RLチップを搭載した1個250円のUSBシリアルの格安公板をeBayやAliExpressで中国から大量輸入してavrdudeが動作するようにlibftdiのパッチを書いて使っていました。演習で必須だったAVRライターのコストが1/10以下になり、部品リストの低価格化を実現することができ、演習後に各自ライターを持ち帰って自己学習を継続することができるようになりました。ただ、中国から輸入したUSBシリアルの格安公板は30個のうち1~3個ほど通電するが実際に通信できない不良品のチップに当たることが多く、演習時にハード不良によるトラブルシュートに時間をとられるようになってしまいました。純正のWindowsドライバでも動かないケースがあったため、パッチを当てたドライバやチップの各種設定、クロスコンパイラを同梱したAlpine LinuxのAPKBUILDパッケージを自作して公開しています。

GitHub - takesako/alpine-iot: Alpine Linux packages for IoT tools

現在は、更なる部品リストの低価格化を進めるべく、各社USBシリアルの格安公板を買い漁り、安定した品質と低価格が実現できるチップと公板を探しました。試行錯誤の結果、第3世代として、Silicon Labs社のCP210xチップを搭載した1個150円の格安公板が良さそうということがわかったのですが、avrdudeで使うためには基板のカスタマイズが必要で、半田付けの作業が必要なため、アセンブリの作業を頑張って内製でやるか、コストをかけて外製でやるか、腹決めするために、深センの様々な現場に行って空気を感じたいと思っています。2017年11月にPicoDuinoが欲しくなり、初めてtindieでオンラインの買い物をした際、Slovakia在住の売り手の人とメッセージのやり取りをした経験がきっかけで、自作ハードウェアの国家間の距離は急速に縮まり、変わってきていると実感しました。

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4. 中国経験など

台湾×5回、上海×2回、香港×1回の渡航経験があります。深センは未経験です。中国ではガイドブック片手に一人で行動ができます。大学では第二外国語として中国語を7年間勉強しました。私自身、語学が非常に苦手で、単位がとれるまで繰り返し何年も同じ先生の中国語の授業を受けていたというのが実態ですので、ボキャブラリーは豊富ではありません。発音については先生に厳しく指導されたため、ピンイン表記があれば中国語の四声を正しく発音できます。北京の標準語の教科書で勉強していたため、簡体字繁体字に読み替えることができます。日常会話は、英語も中国語も日本語も聞き取りが非常に苦手で…、何度も聞き直すことがあります。

台湾のカンファレンスでは、セキュリティ技術に関する国際発表を3回ほど行ないました。

  • 2010年 OSDC.tw 2010「Polyglot Programming and Web Security」
  • 2011年 OSDC.tw 2011「x86 ASCII Programming (16bit/32bit)」
  • 2011年 HITCON 2011 Hacks in Taiwan Conference「Disassemble Flash Lite 3.0 SWF File」

5. メイカーズのエコシステム ハードウェアのシリコンバレー深圳感想

日本の大企業の中で新規事業開発の部署をどのように作るかといった苦労が垣間見れる「つくる~む新横」を立ち上げたリコーの井内さん寄稿の記事が非常に心に刺さりました。ブルーカラーは製造原価算入、ホワイトカラーは販売管理費と、中国の会計基準に関する記述についても惜しみなく藤岡さんが触れているのが興味深かったです。アントレプレナーシップを持ちながらも、オーナーシップを持ち、業務プロセスの末端までコンプリート出来る経営者は私のロールモデルです。